京橋・宝町法律事務所

裁判傍聴のお勧め

憲法82条1項は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定しています。この趣旨につき、最高裁は「裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。」と判示しています(最高裁昭和63年(オ)第436号平成元年3月8日大法廷判決・民集43巻2号89頁)。

このように、裁判が公開の法廷で行われることは裁判に対する国民の信頼を確保するという点から重要なことであり、まだ裁判を見たことがないという方は、一度、お近くの裁判所を訪れ、裁判を傍聴されてみては如何でしょうか。

裁判を傍聴するために特に手続は必要ありません。裁判は、土日はやっておらず、平日の昼間にしか開かれませんが、もしお時間があれば、ふらっと裁判所に出向いてみてください。裁判所に着いたら、通常、建物の1階に当日開催される裁判の予定表等がありますので、それを見て、興味が湧いた事件の法廷に行き、静かに入室して、静かに傍聴する、これだけです。東京では、霞ヶ関に東京高等裁判所・東京地方裁判所の建物がありますが、その1階には、当日開催される裁判が検索できるタッチパネルがありますので便利です。なお、著名人の裁判や有名な事件の裁判では、傍聴を希望する方が殺到するため、傍聴席の抽選が行われることがあります。各地の裁判所のホームページにおいて、傍聴席の抽選が行われる裁判の情報が公表されていますので、参考にしてみてください。(裁判所ホームページ「各地の裁判所の傍聴券交付情報」)。

公開の法廷で行われる裁判は、刑事裁判(殺人、強盗、窃盗等の犯罪を行ったとして起訴された被告人につき刑罰を科すか否かを判断する裁判)の公判手続と民事裁判(損害賠償を払えとか、建物から出て行けといった私人間の紛争に関する裁判)の口頭弁論(こうとうべんろん)期日です。家庭裁判所では、一部の人事訴訟(離婚訴訟等)を除き、公開の法廷で行われる裁判は少ないので、傍聴に行くとすれば、おすすめは地方裁判所となります。

地方裁判所の裁判のうち、裁判の傍聴を一度もしたことがない方にお勧めなのは、刑事裁判の「新件」です。傍聴初心者の方には、殺人等の重大な事件ではなく、薬物犯罪や窃盗等の事件の「新件」が良いでしょう。被告人に対する人定質問、黙秘権の告知、検察官による起訴状の朗読等の冒頭手続から始まり、証拠調べ、被告人質問、検察官の論告、弁護人の弁論、被告人の最終陳述と一連の流れが基本的に口頭で進められるため、傍聴していても内容が比較的良く分かり、また、被告人が事実を認めている事件であれば、およそ1時間程度で終わるからです。

他方、民事裁判は、あまり傍聴には向いていません。民事裁判は、基本的に、書面の応酬で裁判が進行し、法廷でこれを逐一朗読することはなく、弁論期日も短時間(早いと、2~3分程度!)で終わるため、これを傍聴しても何のことかよく分からないと思います。なお、民事裁判の中でも、証人尋問は、原告、被告の双方代理人が口頭で証人等に尋問をしていく期日であるため、通常の弁論期日と比べると傍聴する価値はあるといえますが、時間が長いものも多く、事案の詳細を分かっていないと少々退屈するのではないかと思います。

テレビや映画では、裁判を扱ったものが多くあり、検察官と弁護士が「異議あり!!」と華々しく叫んでいるシーンがよくありますが、実際の裁判は、淡々と、地味に展開することが多く、期待外れに終わるかもしれません。しかし、厳粛な空気に包まれていることは確かであり、日常とは全く異なる空間を体験してみることも良いのではないでしょうか。

本稿情報

執筆者
梅本 寛人
03-6272-6918