令和6年公益法人認定法の改正①-外部理事・外部監事-
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下「認定法」とします。)の改正法(令和6年5月22日公布)が、いよいよ令和7年4月1日から施行されます。
改正認定法の内容は、概ね、令和4年6月に内閣府に設置された「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」が令和5年6月に公表した最終報告に沿ったものとなっていますが、一部、新たに追加された内容も含まれています。これから、数回にわたり、改正認定法の内容について、主としてガバナンス面、行政手続の変更点等を中心に解説していきたいと思います。
外部理事・外部監事の要件
改正認定法では、公益法人は、外部理事・外部監事を置くことが義務づけられます(外部理事・外部監事を置くことが公益認定基準となります。改正認定法5条15号、16号)。なぜ、外部理事・外部監事を置くことが義務化されたのか、その趣旨につき、公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)・101頁は次のように説明しています。
○公益法人が適正に運営されるためには、理事会(理事)による職務執行の監督、監事による職務執行の監査等を通じたけん制機能が発揮されることが不可欠であり、理事会や監事がその機能を発揮する上で、法人外部からの視点を取り入れることが重要であることから、理事及び監事の各一人以上は、法人外部の人材を選任することを公益認定の基準としている。
○立法当初にはなかったが、一部の法人において、理事による公益法人の私物化や内輪のみの法人運営が行われ、法人の機関が健全に機能しない例が見受けられたこと等を踏まえ、会社法における社外取締役等も参考に、令和6年改正法により公益認定基準として追加された。
外部理事・外部監事の意味(要件)は、次のとおりです。
外部理事
次の3要件をすべて充たす者(一つでも充たさないと「外部理事」とはいえない)が「外部理事」となります。
【※1】「子法人」とは、法人がその経営を支配している法人として法務省令(一般法人法施行規則)で定めるものをいい、一般法人法施行規則3条にて詳細が定められています。
【※2】「業務執行理事」の意味について、公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)・102頁は次のように説明しています。
業務執行理事とは、①代表理事、②代表理事以外の理事であって理事会の決議によって一般社団法人の業務を執行する理事として選定されたもの(法人法第91条第1項第2号及び第197条)及び③当該一般社団法人の業務を執行したその他の理事(個別の委任により業務を執行した理事)をいう。③は、対象となる理事が法人の事業に関わる業務を執行したかどうかで判断されるものであり、当該理事が行った行為が、 ⑴業務の都度又は内部規定等によって個別に委任されていたか、⑵その内容は、当該理事が単独で法人の事業に係る意思決定又は意思表示を行うものであるか、あるいは法人内部における指揮命令権を行使するものであるか等を踏まえ判断する。したがって、例えば、理事が法人内部の委員会において委員を務め、助言や審議を行う行為は、当該理事が単独で法人の事業に係る意思決定を行う行為ではないことから、業務を執行したとはみなされない。
【※3】「使用人」とは、法人の職員(事務局長、事務局員等)その他の法人の指揮命令の下に労務を提供する者をいいます。
【※4】「社員」の意味について、公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)・102頁は次のように説明しています。
社員とは、法人法第11条第1項第5号の規定に基づく定款上の社員を指す。代議員制度(第4章第9⑶参照)の各会員は含まれない。各会員を外部理事・外部監事として選任することについては、制度の趣旨を踏まえ、その役割を適切に発揮し得る者が選定されることになるか、慎重な判断が望まれる。
【※5】「設立者」の意味について、公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)・103頁は次のように説明しています。
設立者とは、法人法第153条の規定に基づき定款に記載のある設立者を指す。対象の一般財団法人が、旧民法第34条の規定に基づき設立された法人で、行政庁の認可を受けたいわゆる移行法人である場合は、旧民法下における設立者について定款に記載がなく、その他の資料等からも遡って確認ができない等の事情があれば、設立者を特定することは要しない。
後段の記載は理解が少々困難ですが、要するに、旧民法下に設立された財団法人から移行した公益財団法人においては、定款に「設立者」が記載されていない例が多く、その場合、他の設立の際の資料(旧主務官庁に提出した昔の資料等)も勘案して「設立者」を確認するものの、それでも確認ができないときは「設立者を特定することは要しない」、つまり、設立者は不明ということで、この「非設立者要件」は考慮しないという解釈を示しているのではないかと私は理解しています。
外部監事
次の3要件をすべて充たす者(一つでも充たさないと「外部監事」とはいえない)が「外部監事」となります(「子法人」「使用人」「社員」「設立者」の意味については、外部理事の項を参照してください。)。
※「外部理事」とは異なり、過去10年間理事であった者も「外部監事」には該当しません(この場合、その方は監事に就任することは可能ですが「外部監事」と評価することはできません。)。
外部理事・外部監事の選任が困難な場合
定款が変更できない問題
公益社団法人において、特に資格者や専門家のみから構成される法人(いわゆる同業者団体)では、役員を「会員の中から社員総会の決議により選任する」と定款において規定している例が多く見られます。
この場合、上記定款の規定は、外部理事・外部監事の設置を義務づける法令の規定(認定法5条15号、認定法施行規則4条1号、3号)に適合しておらず、定款の当該規定は速やかに変更する必要があります。もっとも、ただでさえ毎年の社員総会での定足数の確保に苦労している公益社団法人において、総社員数の3分の2以上の賛成を要する定款変更(一般法人法49条2項4号、146条)を行うことはハードルが非常に高いものとなります(そもそも、なぜ、一般法人法では、会社法とは異なり(会社法309条、466条)、「出席した社員の3分の2以上」ではなく「総社員の3分の2以上」となっているのでしょうかね・・)。
この点について、公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)・101頁の注85に、次のような記載があります。
外部理事・監事について、改正認定令及び改正認定規則の公布(令和6年10月30日)以降、遅滞なく、外部理事・監事の選任、定款等の改訂等の準備を開始したにも関わらず、外部理事・監事の設置を行うことができなかった場合や、外部理事について、新制度施行直後に提出予定の事業報告の数値により外部理事を選任する必要が生じた法人が、急遽の外部理事の選任、定款等の改訂等を行うことができない場合には、外部理事・監事の選任に係る手続の状況や選任までの見通しなどについて行政庁から法人に説明を求めることとし、やむを得ず困難であると認められる場合には、基本的に本件に対する監督は行わないこととする。
つまり、「定款変更に向けて頑張ったものの、定款変更が出来なかったときは、行政庁に今後の状況等について説明をし、やむを得ず困難であると認められる場合は、基本的に監督は行わない」とされています。しかし、ずっと定款変更をしなくとも良いのか、あるいは定款変更はできないけれども、(取り敢えず?)外部理事・外部監事は設置するようにと行政庁は指導するのか、その辺りの運用はまだ分かりません。結局、解決のためには、所轄の行政庁に相談をされて進めるほかないのではないかと思います。
報酬が出せない問題
公益法人においては、役員(理事・監事)につき、定款で無報酬(あるいは、常勤役員には報酬を支払うが非常勤役員は無報酬)と規定している例が多く見られます。しかし、外部理事・外部監事を置くとなると、これを無報酬とするのには困難を伴います(特に、外部理事・外部監事に弁護士、会計士、税理士等の専門家を置く場合)。これも公益社団法人においては顕著となりますが、良く考えてみてください。「当該社団法人の会員ではないけれども、法人の事業等に一定の理解があり、役員としての責任も負い、かつ、それを無報酬でやってくれる人」て果たしているのでしょうか?
ということで、外部理事・外部監事の人選を円滑に行うためには、外部理事・外部監事には一定の報酬を支給する旨の定款変更を(役員報酬規程の改定も)行う必要がありますが、前記のとおり、特に公益社団法人において定款変更のハードルは非常に高いのが通例です。
「外部理事・外部監事を置いて法人のガバナンスの向上を図る」という制度趣旨は誠に立派ではあるものの、それを実現するために公益法人(特に公益社団法人)が取るべき対策は、なかなか厄介なものであるといえるでしょう。
上記の公益認定等ガイドライン(令和6年12月改訂)の記載からすると、行政庁の監督もある程度は融通が効きそうな感はありますが、公益法人は、本腰を入れて、外部理事・外部監事の導入に伴う施策に取り組む必要があります。
経過措置
外部理事・外部監事の設置については、法令上の経過措置が設けられています。
まず、外部理事の設置については、改正法施行の際(令和7年4月1日)に現存する公益法人は、令和6年改正法附則5条2項により、当該公益法人の全ての理事の任期が満了する日の翌日から当該規定が適用されることとなります。また、外部監事の設置について、改正法施行の際(令和7年4月1日)に現存する公益法人は、改正法附則5条3項により、当該公益法人の全ての監事の任期が満了する日の翌日から適用されることとなります。
つまり、令和7年4月1日時点の理事すべての任期が満了するまで、あるいは、同時点の監事すべての任期が満了するまで、それぞれ、外部理事・外部監事の設置は猶予されます。
もっとも、早い例だと、令和7年6月頃に開催される社員総会(評議員会)の終結時に理事・監事のすべてが任期満了となる法人(今年の社員総会・評議員会が役員改選となっている公益法人)では、そこで、外部理事・外部監事を選任する必要があります。もうあまり時間はありませんから、早々に準備を始める必要があります。
非社員性・非設立者性要件について(私見)
改正法令が固まってしまったため、公益法人の実務としては、改正後の法令に沿って運用するほかなく、以下の記載は単なる私の感想というほかありませんが、外部理事・外部監事の要件として、公益社団法人においては社員ではないこと(非社員性)、公益財団法人においては設立者ではないこと(非設立者性)がそれぞれ規定された立法技術、経緯等については、少々感じるところがあります。
非社員性・非設立者性要件は、いずれも内閣府令(認定法施行規則)において規定されたものです。国会審議を経て規定された認定法の条文では「理事のうち一人以上が、当該法人又はその子法人(略)の業務執行理事(略)又は使用人でなく、かつ、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の業務執行理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。」(認定法5条15号)、「監事(監事が二人以上ある場合にあっては、監事のうち一人以上)が、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。」(同法同条16号)となっていますが、これを受けて、内閣府令(認定法施行規則)において、非社員性・非設立者性要件が定められました。
もっとも、会社法の「社外取締役」(会社法2条15号)、「社外監査役」(同法2条16号)においては、公益社団法人における「社員」に相当する「株主」ではないこと、つまり「非株主性」という要件は特に設けられていません。
法律では、内閣府令で定めることができるのは、法人の理事(業務執行理事)や使用人でないこと等に「準ずるもの」となっているのですが、果たして「社員ではないこと」「設立者ではないこと」というのは、理事や使用人ではないこと等に「準ずるもの」といえるのかが私にはいまいち理解できません。「社員」というのは、社団の構成員であり社団の存立の基礎となる人々で、また、「設立者」というのは文字通り財団を作った人であり、その設立者の意思を実現するのが財団です。このように理事や使用人とは根本的に異なる立場の人がそれに「準ずるもの」といえるのか、内閣府令は認定法という委任の母法において規定された委任の範囲を超えてしまっているのではないか、立法技術的に果たして妥当だったのか、というのが私が少々疑問に思うところです。
さらに、実際問題、特に公益社団法人において、最も影響があるのが「非社員性要件」であることは先に述べたとおりです。このように、実務上、つまり公益法人の実際の活動において最も影響のある内容が、国会審議を経ないで制定される内閣府令という下位の法令によって規定されても良いのかというのは、良く検証する必要があると思う次第です。
本稿情報
- 執筆者
- 梅本 寛人
- 関連分野
- 公益法人・非営利法人